絶滅の危機にあるホッキョクグマ
なぜホッキョクグマが絶滅の危機に?
2020年7月20日、ホッキョクグマが2100年までにほぼ絶滅すると予想した論文が英国の科学誌ネイチャー・クライメート・チェンジに掲載されました。
実際、シロクマとも呼ばれて親しまれているホッキョクグマの数は過去10年間で半分近く減っています。なぜホッキョクグマは絶滅の危機にあるのでしょうか。
それは、ホッキョクグマの生態に関連しています。ホッキョクグマは、野生の場合25〜30年とされる生涯のほとんどを氷で覆われた海の上で過ごします。
ホッキョクグマにとっての海氷は、狩りをしたり、休んだり、子を育てる暮らしの場です。
ところが、この生きていくための場所自体が消えつつあります。過去30年の間に、北極の夏の海氷はなんと75%が消えました。
これは地球温暖化のためです。北極地域では、「北極の温暖化増幅」として知られている現象が原因で、地球全体の平均の2倍以上のスピードで温暖化が進んでいます。
ホッキョクグマが絶滅の危機にある理由は、人間が引き起こした地球温暖化なのです。
地球のエアコンである北極が壊れていく
北極と北極の海氷は、地球全体を健康に保つ重要な役割を担っています。
北極の気温は北極の海水温よりも低いことはご存知でしたでしょうか。海氷は冷たい空気と海水の間で絶縁体の役割1を果たしています。海氷があることで、海水が気温を上げてしまわないように調整しているのです。
また、海氷があることで、大気に取り込まれる水分の量は制限されますが、これは嵐が起きるのを予防しています。
北極は、海氷があることで地球のエアコンのような役割をしているだけでなく、嵐などの悪天候を防いでいるのです。
海氷が溶けてなくなってしまうことは、地球のエアコンが壊れてしまうことを意味しています。
地球温暖化により減少した北極の海氷は、ホッキョクグマを絶滅の危機に追い込むだけでなく、地球全体における猛暑や豪雨などの異常気象も引き起こしているのです。
2030年、北極の海氷がなくなる
ホッキョクグマの生存は、北極の夏の海氷が75%消えてしまったことにより、危機にさらされています。そして、原因である地球温暖化は、北極では世界の平均の2倍のスピードで進んでいます。
このままでは、2030年の初めには、北極の夏の海氷がなくなると予測されています。そして、すみかを追われたホッキョクグマが生き延びる可能性を奪うのです。
残された時間は多くありません。
ホッキョクグマを絶滅の危機から救うには?
はじめまして。国際NGOグリーンピース・ジャパンの石川せりと申します。
グリーンピースでは、目の前のホッキョクグマを守るためには、ホッキョクグマを苦しめている環境破壊を止め、生態系そのものを守る必要があると考えています。北極の環境と生態系を守ることが、最終的にホッキョクグマとそのすみかを守り、絶滅の危機から救うことにつながるのです。
そのために以下のような活動をしています。
1)データを積み重ねる
まずは、事実を知ることが大切です。そのために、北極の環境の実態についての研究と調査を進め、以下の報告書を発行し、国際社会に発表しました。
「気候変動が北極野生動物への影響」報告書(2012)
「北極保護区域」提案書(2014)
北極の海洋生態系を破壊するトロール漁船の実態報告書(2016)
これにより、北極の環境と生態系がどのように破壊されているか様々なことがわかりました。
例えば、海氷の減少により狩りができる期間が短くなったために、十分なエネルギーを蓄えられない雌のホッキョクグマが出産する赤ちゃんグマの数が減ったり、場合によってはまったく出産できないことも確認されています。
2)環境と生態系を壊す行動を減らす
例えば英国の石油会社ロイヤル・ダッチ・シェル社が北極で行なっていた石油探査には、重大な環境汚染リスクがあることがありました。
そこで私たちグリーンピースは、この事実を明らかにするとともに、ロイヤル・ダッチ・シェル社だけでなく、取引がある企業も含めて粘り強い交渉を行いました。
その結果、レゴブロックを製造するレゴ(Lego)社は、石油探査に反対して50年に渡るロイヤル・ダッチ・シェル社とのパートナーシップを終了し、シェル社による石油探査は2015年に終了しました。
現在も、シェル社を含むすべての石油会社が石油探査を始めることがないよう、働きかけは続いています。
このように北極の環境や生態系に重大な影響を与えかねない経済活動を行う企業に、丁寧な働きかけを行っています。
3)環境と生態系を守る行動を増やす
環境破壊を止めるというマイナスを減らす取り組みと同じくらい大切なのが、プラスを増やす取り組みです。
そのために全世界の指導者たちに働きかけているのが北極保護区域の指定です。
北極の一部である280万㎢に渡る地域を、石油採掘や工業的な漁業を禁止する海洋保護区にすることを求めています。
海洋保護区を設置することで、海洋生物の数や多様性を安定的に、そして早いペースで増やせることが分かっています。
力を合わせればできることがある!
私が環境保護に関心を持ったきっかけは、2011年の福島第一原発事故です。
同年代の女性が「将来子どもが産めなくなったらどうしてくれるんですか?」と言っているのを目にし、胸が締め付けられる思いをしました。それと同時に、自分が使っている電気が誰かの犠牲の上に成り立っている事実を知り、大きなショックを受けたのです。
どんなに便利な生活をしていても、根本の地球環境が壊れてしまったら元も子もないと思い、環境保護活動に取り組む決心をしました。
北極での環境破壊やプラスチックによる海洋汚染など、環境問題の規模はとても大きく、「私一人にできることは何もない」と絶望的な気持ちになることもありました。
ですが、一人ひとりの力を合わせて、小さくても様々な働きかけを行い、それによって起きた変化を目の当たりにすることで、「力を合わせればできることがたくさんある」と思い直すことができています。
ホッキョクグマと北極を守るためのこの取り組みも、みんなで小さな成功を積み重ねて、次の世代に美しい地球を引き継いでいけたら、と思っています。
国際NGOグリーンピースとは?
私が働く国際NGOグリーンピースは、海や森、そこで暮らす生きものを守る取り組みなど、世界55以上の国と地域で、地球環境と平和を守るために活動する国際NGOです。
1971年の設立以来約50年、海洋生態系保護、森林問題、気候変動といった地球規模の環境問題に取り組んでいます。
世界300万人以上のご支援者様、国内約1,000人のボランティアといった仲間に支えられながら、過去数年間ですと、次のような成果をあげることができています。
世界最大のパーム油企業であるウィルマーが森林破壊撲滅を約束しました(2018年)
ユニクロを展開する株式会社ファーストリテイリングが全ての有害化学物質の使用・排出を2020年までに全廃すると発表(2013年)
世界最大ツナ缶メーカーであるタイ・ユニオン・グループと海の生態系を保護するための業務改善に合意(2017年)
あなたも地球と生きものを守るひとりに!
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。人間の行動がホッキョクグマを絶滅の危機に追い込んでいることや、環境を守るための行動の大切さについてお分かりいただけたのではないかと思います。
「ホッキョクグマを絶滅の危機から救いたい」
この想いには、どなたにでもご賛同いただけるのではないかと思います。
私たち一人ひとりには、この地球とそこに暮らす生きものを守り、次の世代に引き継いでいく責任があると思います。
そのために、あなたにできることがあります。
グリーンピースの活動は、その全てが個人の方お一人おひとりの寄付に支えられています。
地球と生きものを守るためにやるべきことは分かっています。ですが、それを実現するための資金が足りません。
どうか、この記事をお読みいただいているあなたも、ホッキョクグマを絶滅の危機から救うためにご支援をいただけないでしょうか。
ご寄付は、月1,000円から、お好きな金額を100円単位でお選びいただけます。ご事情が変わられた場合は、すぐに停止することができます。
どうか、あなたも地球と生きものを守るひとりとなり、世界中に300万人いる仲間に加わってください。
地球と生きものを守る仲間の声
私たちと一緒に地球と生きものを守ってくださっているご支援者様を紹介させてください。
グリーンピースのスタッフと以前から友人だった宮尾多希さまは、環境破壊の実態を知り、なにか自分にもできることはないかという会話がきっかけで、毎月の寄付を始めてくださいました。
今回、宮尾さまにインタビューをさせていただきました。
Q. ご支援を始めてくださった理由を教えてください。
ある時、自覚なく自然環境に負担をかけていたということに気づき、何か始めたいと思っていました。支援を決めた一番の理由は、スタッフの皆さんの存在です。環境保護に熱心なのはもちろんのこと、温かく楽しい方たちばかりで、その雰囲気を好きなりました。
Q. ご支援を始めてみて、どのように感じられていらっしゃいますか?
自分の暮らしが環境破壊にどのように繋がっているのか実感がなかったのですが、メールマガジンなどを読んで、私たちの行動が環境にどのように影響するのか具体的に分かってきました。
動物も植物も川も海も畑も森も、そして私たちも、みんな繋がっていて共に生きているということを実感しています。家族や友達にするのと同じように、私にできることをやっていこうという気持ちでいます。
Q. 支援を検討されている方へのメッセージをお願いします。
私も微力ながら環境に配慮した生活をしています。しかし一人でできることには限りがあり、もどかしい思いもありました。ある時、「できないことはグリーンピースに頼もう!そんな気持ちで任せてくれていいんですよ」とスタッフの方に言われ、心が軽くなったのを覚えています。
私には幼い子どもが2人いますので、将来のことを考えざるを得ません。50年後も100年後もずっと続く地球の営みを守れるのは、今の自分の行動次第。すべてのものにとって、居心地の良い地球になるよう、仲間に加わっていただけたら嬉しいです。
あなたが地球のためにできること
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
私たちの毎日の生活は、地球環境と生態系に少しずつ負荷をかけています。それがつもり積もって、地球が温暖化し、北極の海氷が溶け、ホッキョクグマの生存が脅かされています。
この現実は変えることができます。あなたが今、ご寄付という形で行動すれば、地球環境は今よりも良くなり、生きものの命は守られます。
どうか、ご支援をお願い致します。
[出典]
※1 Mother Nature Network